She advanced through the alley

この絵について 

もともとこの絵は1990年代のいつだったかに、ある都会のある街に行き自分で撮影してきた写真をもとにして、2010年ぐらい(たぶんそれぐらいかなあ…もしかしたらもっと前かもしれません)に描いただろうという絵です。ちょっと正確な年代が思い出せなくてすみません。

その絵をもとに看板の文字を描き足すなど絵的な改造を行いながら、いくつかの自分のマンガの背景画として使用していました。例えばブログに掲載したこのカットの場合は、『テナント募集』や『入居店舗募集』などの看板で街が埋められているという改造を行っています。何でそういう事になったのかは、申し訳ありませんがこれも理由をあんまり覚えていません。

なお、2020年の追記としてですが、11月半ば頃にこの絵のファイルを(今回の場合はあまり状態の良くないjpgしか手元に残されていませんでしたので)フリーソフト『waifu2x-caffe』を使ってノイズをとり、Photoshop elementsでシャープを強めに調節する、という事を行いました。

この絵を描いた時の話

2010年とか2006年とかだいぶあやふやですけど、この絵を描いた時の話を少しだけします。

ビルの看板や建物などはそっくりそのまま描いたらまずい部分もあるし、技術的にもそっくりそのまま描けないしというわけで、実際に絵にする時には、写真をもとにしつつ少しずつディテールを変えて描いたりしていました。たとえばあんまり煩雑になるところなどは適当に頭の中で描きやすい構造に変えたりしていたと思います。

ただ電信柱のトランスまわりとか、コードがからみついている異様な感じの機械類とかは被写体として本当に面白いと思ったので、写真のディテールを観察しながら、なるべく嘘っぽく見えないような機械を描くようにしたつもりです。

奇妙に育ちつつあった混沌

2020年となった今はどうなっているかわからないのですが、1990年代の前半頃にはまだ街のあちこちに、こういう奇妙に育った電信柱などのいわゆる混沌が「私たちは街のカオスです」という顔をしながら存在していたような気がします。

その混沌は巨大な地割れのようなものではなく、最初は裂けるおつまみのように小さな裂け目だったのだと思います。捨ててある錆びだらけのオートバイとか、だれも拾っていかない壊れた家電製品、何かのスプレーの空き缶や破れたビニールの袋。1990年代前半の空気。ゆっくりと裂けてゆく何かの気配。

ともかく、そういう1990年代上半期の都会の裂け目的風景を眺めながら自分は、「こういう所を巣にして、熱や人間の生活エネルギーを食料に、際限なく大きくなる怪物がいたとして…」といった様な、1958年のアメリカ映画『マックイーンの絶対の危機(The Blob)』に出てくる不定形の怪物とか、TVシリーズ『ウルトラQ』に出てくるバルンガという怪獣の話みたいな事をぼんやりと考えたりしていました。

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